[ 緊急掲載 ]
「北朝鮮の脅威があるからブッシュ政権に頼らなければならない」という論調がある。本当にそうだろうか。
むしろブッシュ政権に頼るから北朝鮮の脅威が生まれるのではないか。
文:浅輪剛博

 悲しいほど選択肢が無いか?


Japan Timesの3月22日号で、元外交官のHanabusa氏が「悲しいほど選択肢が無い日本」と題して投稿されていた。国防を米軍に頼っている日本としては、ブッシュ政権を支持するしか選択がないのだ、ということである。なぜこうなってしまったかといえば、戦後アメリカ合衆国の力を隠れ蓑にして、東アジアにおける外交をそして国防を怠ってきたからだ、という。

さて、元外交官では無い私はこの意見に対して、コメントしがたい。情報を得られないからだ。本当に選択肢が無いのか。小泉という人は世論は正しくないこともある、といったそうだが、少しも情報を公開しないで、どうやってわれわれは判断したらいいと言うのか。文句をいうなら情報公開しなさい。

それはともかく、戦後の日本の東アジアおよび東南アジア政策は完全に失敗した、というのは本当のことだろう。植民地時代の過酷な歴史(拉致も殺人も頻繁に行われた)をちゃんと正視せず、きちんと謝罪も保障もしてこなかった。それが、東アジアの国々の人たちに強い反日感情を残し、たとえば、北朝鮮の独裁政権にあの植民地帝国日本のやつらなのだから、拉致したってイーブンだろう、という難癖をつけられるのを許した。そもそもあの独裁政権をこのように国際的に孤立するように仕向けたのも、日本と米国の東アジア政策の失敗による。

そして北朝鮮自体には、独裁政権である上に世襲制を引いているという問題がある。世襲制を一度引くと、他の優秀な人間が最高位置について、政権交代をしようという意欲を無くさせる。そうやって判断をどんどん誤っていって、大失敗を重ねる。ソ連や中国が世襲制を引かず、政権交代ができるようにしておいたのとは大きな違いである。また、徳川幕府なども少なくとも御三家などを作り、多少政権交代が可能であるようにしていた。親を継いだ政治家がいかに貧しく危うい政治を行うか、別に北朝鮮を見なくても、東アジア政策を失敗した2国の現状を見ても分かるとおりである。

北朝鮮による拉致問題というのは、多くの日本人は驚いたようだが、実はずいぶん前から知られていたことである。それなのになぜ、日本政府は手を出してこなかったかというと、拉致問題を強く言えば、北朝鮮は日本の植民地時代の戦争責任を追及してくるからである。公には戦争責任は認められないのだから、同時に拉致問題も追及できない。つまらないマッチョ政権がどのようなミスをしてきたのか、明らかである。

北朝鮮のミサイルが怖いから米軍に頼ろう、という意見がある。米軍は、ミサイルを打ち込まれたらその後で反撃する(だろう)のだから、実際のところはミサイルの脅威を薄めるのにそれほど役に立つわけではない。そして米軍に頼って北朝鮮政権を攻撃なり転覆なりしたら、今度はさらに米軍に頼らざるを得なくなり、次に米国政権が起こす戦争をさらに支持するしかなくなってしまう。当然世界はどんどん不安定化していって、とんでもないことになるだろう。こういう悪循環に入ってしまうことをなぜ読み取れないのか。

とはいえ、もちろん米国がこんな戦争をいつまでも続けていられるのかどうか怪しいところでもある。イラク侵略自体がどのくらい続きどのくらいの犠牲を出すのか分からない。たくさんの犠牲を出せば、嫌戦気分が米国民を覆い、遠い北朝鮮で戦争をしたりするのを嫌がるだろう。実際に現在米国政府内で言っているのは、(石油の無い)北朝鮮の問題まで米国はやってられない。脅威と感ずるなら日本が核武装すれば良いじゃん、ということだそうである。もちろんこれは核を含む大量破壊兵器の拡散を防ぐためにありがたくもイラクに侵攻している政府の言葉である。

そもそも、米国が無理な圧力をかけるので、北朝鮮が硬化しているのは誰の目にも明らかである。前クリントン政権(経済でうまく行けば後は何でもいい政権)が、安い労働力、鉱物資源などを狙って、急速に北朝鮮と近づきオルブライト国務長官が訪問し、あと少しでクリントン自身が北朝鮮を訪れそうになっていたことを覚えているだろうか。あの状態が続いたら、北朝鮮政権がおおっぴらに核開発を再開したりミサイル実験を行ったりするような状況になったであろうか。

あの後何が変わったか。米国政権が変わっただけである。北朝鮮が軍事的圧力を強めようとしているのは、ブッシュ政権(力を得れれば後は何でもいい政権)の外交的軍事的圧力のせいである。米国が圧力をかけるから北朝鮮が脅威になるだけである。反対に考えてはいけない。経済的に米国とせる日本とドイツをおとしめようというブッシュ政権幹部の基本政策を考えれば、東アジアを不安定化させようというのも当然だろう。

イラクのフセイン独裁政権を軍事力で蹴落とすのが国際法に違反するのと同じように、北朝鮮の独裁政権も民主主義的に、そして北朝鮮の人たち自身の力で解決していくように向けるのが民主主義を信じるわれわれの責務ではないのか。北風ではなく太陽を。

もちろんそうはいっても、イラク侵略成功の後は、アメリカ政府は莫大な復興基金を出すそうである。(多分日本の金を使って。日本が買い支えている米国政府債を使って)既に、復興資金の投資先を狙っていくつかの米国企業はうはうはだそうである。60年前、世界大不況を抜け出すのにも、第二次世界大戦の軍事費とマーシャルプランが役立ったのだそうだが、再び産軍共同体はその結束を高めるのだろうか。またはその前に世界の反戦運動が真実を世の中に送り届けるのだろうか。



ご意見・ご感想はこちら
人気投票 感想BOX


 
[ HOME ]