今、反戦デモに参加するって、どういうことかしら?
〜デモに出かけた人の声を読んでみてね。

筆者プロフィール:攝津正 1975年生まれ・元パートタイマー・現在無職


 反戦デモ──対抗運動の青空教室


 2003年2月2日、東京・渋谷の宮下公園集合の「イラクへの戦争NO! 渋谷デモ」に参加した。呼びかけたのはたったふたりの自由な個人。1月18日の国際反戦行動を発展させ、2月15日の次回の国際行動につなげていこうという企画だ。主にネットを通じた情報交換と連帯が広がり、当日の参加者は160人に達したという。高校生にもみえる若者や在日外国人(白人が多かった印象だが、自国を批判するアメリカの市民たちだろうか?)、パンクスなどが多数参加し、音楽や踊りを通じた平和への思いの表現なども各人思うままに行われ、多彩な顔ぶれによる賑やかな「楽しいデモ」が実現した。肌寒いなか渋谷を一周するうちに(1時間ほどだったろうか)、通行人が次々に行進に加わってきた。

 国家と資本がなりふり構わずすすめる戦争に、市民(個人)が対抗することなどできるのだろうか。私たちは抗議の声をあげ、署名することができる。歩くことができる。それは、ただちに効果をもたずとも、市民的不服従の倫理=習慣を身につける運動=体操になるだろう。歌いあるいは黙りこみ、踊りあるいはこわばった多数の身体が、その倫理=習慣を身につけることで、全地球的に連合した対抗運動が準備されるだろう。

 反戦・平和の営みに参加するとは、対抗を学ぶ場に身をおくことだ。街頭では、実際にからだを動かす「運動」(体育の授業)に参加することになる。電車内や自宅では、世界史および倫理の授業に参加することを勧めたい。すなわち、認識と思考を。
私が知るかぎり最良の教科書は、ジョエル・アンドレアス著『戦争中毒』(きくちゆみ監訳、合同出版)および酒井啓子『イラクとアメリカ』(岩波新書)である。これらを一読するだけで、状況の一端がわかる。フセインかブッシュかという贋の(しかし逃れがたい)二者択一を「セカイノカラクリ」=罠として捉えられる。国際政治上のモンスターを支持する自暴自棄も、ブッシュに賛同するシニシズムも、ともに斥けよう。ブッシュにもフセインにも対抗しよう──地球規模で連合する市民として、国家と資本に対抗しよう。統治者たちがいかに英雄主義的な、あるいは殉教者ふうの身振りをしてみせたところで、戦争で傷つき死ぬのは彼らではなく、私たち市民なのだから。



(サダム・フセインは)くそったれの息子だ。だが、「私たちの」くそったれの息子だ。(レーガン政権期、ジョフリー・ケンプ米国家安全保障委員会中東担当官の言葉)(酒井啓子『イラクとアメリカ』岩波新書、p88)

「アメリカかフセインか」という二極対立構造への単純化が進むなかで、家族の半分をフセイン政権の弾圧で亡くし、残り半分をアメリカの空爆で亡くしたような市井のイラク人たちの、「どちらももうたくさんだ」という声は、どこにも届かない。(同書、p214-215)


 ところで、当日集合時間より早めに宮下公園に着き、野宿者のテント群に目を奪われた。宮下公園では多数の野宿者がテントなどで生活しており、毎週土曜に「のじれん」が共同炊事の活動を行っている。デモ参加者が集まってくるのを、ベンチに腰掛けた野宿者らしい中高年の男性が遠くから眺め、時に声を荒げて何かをいっていた。
喚き声は不明瞭でよく聞きとれなかったが、イラクの子どもたちの命を守ろうといいながら、目の前にいる人たちのことを忘れるなら、単に欺瞞であることに思い至らざるを得なかった。

 世界戦争=地球規模の階級闘争は遠い中東の地にあるだけでなく、「今ここ」にもある。職を失い困窮したとき、この人たちとともに公園で技術・家庭科(生活技術)の授業に参加するだけの勇気があるだろうか、自問した。「楽しいデモ」の間も、寒い公園に残ったこの人たちのことが頭を離れなかった。とはいえ、私の視線はこの人たちを「仲間」としてみるまなざしではなく、「彼ら」(他者)としてみるまなざしに過ぎなかった。私をイラクの人たちと隔てるのと同じくらいの厚みのある見えない壁が、私とテント村の住人たちの間にもあった。

 対抗運動に参加するとは、遠く離れた地域での戦争と今目の前にある現実とを、同じひとつのセカイノカラクリの相において、認識し行動することなのではないだろうか。見えない壁を越えることができるのは、一時的な感情(同情)や盲目的な活動ではなく、状況の把握に基づいた運動以外にない。そのような運動は稀にして困難である。しかし、身構える必要もない。単に漫画(例えば、『戦争中毒』)を読むことから始めればいい。


※「イラクへの戦争NO! 渋谷デモ」実行委員会、また参加者の方の報告
http://awn.ath.cx/project/report.html

イラクへの戦争NO! 渋谷デモhttp://awn.ath.cx/project/NoWarIRAQ.html

ジョエル・アンドレアス著『戦争中毒』(きくちゆみ監訳、合同出版)
http://www.peace2001.org/gpc/war_book/add_inform.html

酒井啓子『イラクとアメリカ』(岩波新書)
http://www.mainichi.co.jp/life/dokusho/2002/0908/06.html

「のじれん」
http://www.jca.ax.apc.org/nojukusha/nojiren/




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