イギリスで始まった産業革命は、農業から工業への産業構造の革命でした。この工業こそ、自然に制約される農業(米はせいぜい年2回しかとれない)の枠をぶっ飛ばし、人工的にどんどん回転を上げ、効率をアップ、同じものをいくつでも作ってしまうという魔法をもたらしました。
この潤滑油がお金。お金が生産、流通、消費をぐるぐると回り始めると、それにあったシステムができてしまい、お金は人々の社会的関係を作っていく資本になっていく、というマジックが演じられ、どんどん大きくなれば儲けも結局大きくなり、人間の欲望も拡大再生産していきます。
石油は実に安価で、便利で効率の良いエネルギー。だからみんなじゃぶじゃぶと使ってしまいます。情報化社会と言っても、大量生産、大量消費、大量廃棄の工業経済は、この石油をベースに今なお続いている。だからアメリカは、石油の世界第二の埋蔵量を誇るイラクを攻撃して、石油をコントロールし、しっかり儲けようと戦争準備をしているのです。
そこで、この石油をエネルギーにした工業から、石油をエネルギーにしない工業にしたらいいんじゃないの、という意見が出てきても不思議ではないでしょう。「工業のエコ化」とか、「工業の農業化」と言われているのがそれです。
40年前に、有機農業が機械化、化学農薬、化学肥料を手段として「工業化農業」へと転換したのとは逆に、「工業を農業化」してしまおうというわけです。地域分散、分権型の循環社会に転換しようとするなら、この「工業化」が不可欠になるでしょう。
「工業の農業化」とは、
- エネルギー、工業製品(プラスティック、医薬品を農林漁業資源(バイオマス)から生産。
- 生物、微生物に直接有用物を作らせる「生産の農業化」。
- 鉄とコンクリートによるダム・排水路を、「緑のダム」や土壌、微生物による保水・浄化にかえる「公共事業の農業化」などを意味する。
もみ、稲わら、間伐材、廃材、水産加残滓、家畜糞尿、食品廃棄物、廃油など、年間1億5000万トン。それに遊休地での菜種栽培などを含めると莫大なバイオマス資源があります。これらを微生物の働きによりエタノール、メタノール、水素、バイオジーゼル燃料などのエネルギーと生分解性プラスティック、医薬品、食料品などに転化できます。
バイオマスは、アルコールにしてもデンプンにしても、ガソリンの代わりに自動車やトラクターを走らせたり、発電の燃料になるばかりか、石油の代わりに、プラスティックなど化学製品の原料になります。
20世紀は、世界のある地域に偏在する石油の争奪をめぐって多くの戦争が勃発しました。それに対して、植物・バイオエネルギーを基盤にする経済をつくるなら、植物は世界に分散しているため、少なくとも、エネルギー争奪の点から見ると、石油をめぐる戦争の根拠はなくなるでしょう。
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